Facebookで紹介した「2016プレナスなでしこリーグカップ 決勝戦日テレベレーザ対ジェフユナイテッド市原・千葉レディース」を観戦してきました。

緊張感あふれる試合は4-0で日テレベレーザが勝利し優勝しました。小柄な選手が多く足元の技術が優れる日テレベレーザと、フォワードに大きく強い選手を配置してカウンターから好機を作るジェフレディース。対照的な両チームの試合は先日行われた日本代表対UAE代表の試合と重ねて見てしまいます。

前半こそ0-0ですが、常に攻勢に出る日テレベレーザは「守る相手はこうやって崩す」というまさに見本となる試合運びを遂行します。そこには男子と女子の差などなく、あるのは高い戦術眼とそれを支える技術の差です。この試合は日本代表もぜひビデオで見て参考にすべきです。

男子の日本代表は守備的な相手に敗北を喫し、日テレベレーザは大勝です。その差は何なのか?日本代表に足りない点を3つピックアップしてみます。

 

早い攻守の切替え

最近のサッカーの主流は「ショートカウンター」です。相手がフィールドの中央付近で迷うようなボールキープを見せたら、そこに複数人が爆発的なディフェンスで囲い込みボールを奪います。そして奪った瞬間から相手ディフェンダーの後ろのスペースに向けて猛然と走り抜け、一本のパス、少ないパス数で相手守備陣を突破します。ボールを奪って一息つく暇もなく、相手の守備が整わないすきに攻撃に転じます。
もちろんボールを奪われた選手は、その場で天を仰ぐ暇などなく、すぐさまディフェンスをしなくてはいけません。
この守備から攻撃、攻撃から守備への切替えスピードが日テレベレーザは(もちろんジェフLも)ずば抜けてます。男子は誰とは言わず、全員がもっともっとスピードアップしなくてはいけません。相手がいくら守備的とはいえ、攻撃する事もある。そのチャンスを見逃してはダメです。

 

サイドを有効に使え

中央ではなくサイドから攻めるのはセオリーであり、それは選手は百も承知でしょう。しかしいくら長友選手がインテルで活躍しているからといって、酒井選手がブンデスリーガでレギュラーだからといって、残念ながら彼らだけでは打開できません。
この試合では、堅い守備のジェフLに対し日テレベレーザは中央付近でフォワードの選手を含めた複数人で細かなパスを交換を行い、相手の守備を中央に寄せます。そしてサイドの選手が空いたならそこに正確なパスを出しチャンスを作ります。
これは最初からサイドの選手に勝負させるのではなく、中央の裏のスペース攻略を第一優先とし、それが無理ならサイドで勝負。一番危険な中央を守るために相手守備陣が集まってきたところで手薄なサイドを使うのですから、チャンスになる確率はとても高まります。
これは全員が戦術的な意思統一がしっかりと出来ていないと成し得ません。
相手の守備が整っていてもサイドでごり押しする男子日本代表とは大違いです。

 

個人の技術を向上しろ

男子と比較して女子の場合は、スピードとパワーを差し引いて見る必要があります。しかしその場合でもボールコントロール、パスの技術は男子よりも断然優れてます。上記の中央付近のボールキープでも相手がいる中でしかもとても狭いスペースで行うのですから、確かな技術と視野の確保が出来ていないと成功しません。そして日テレベレーザだけでなくジェフLも相手のプレッシャーの中でもしっかりとした技術を発揮しています。プロらしくないミス、「あ~あ」とため息が出るようなミスは皆無です。
またボールコントロールだけでなく守備の技術も秀逸です。激しくもしかし確実にボールにタックルする技術はフェアであり、先日の試合でPKを取られたような無様なプレーはありません。またヘディングの競り合いで見せるポジション取りや相手のバランスを崩す技術は、地味ですがとても高いレベルにあります。

澤選手の引退、リオオリンピック予選の敗退などネガティブな話しが多いなでしこですが、ワールドカップで優勝した実力は本物で、ワールドカップベスト16が最高の男子サッカーはぜひ見本とすべき存在です。
それにしても日本の女子サッカーは層が厚いですね。才能ある若い選手がどんどん出てきます。育成が上手く行っているのでしょう。

 

本日のピックアッププレーヤー

shimizumisa

日テレベレーザ 清水梨紗選手
右のサイドバックの彼女は足が速いわけでもなく、卓越した技術があるわけもありません。しかしピンチの時は逆サイドまでカバーし、チャンスの時は最前線まで上がっていきます。今日は彼女のセンタリングから2得点が生まれました。
身体能力や華麗な技術だけがサッカーではない良いお手本です。多くの子供たちに見てもらいたい選手ですね。

こちらも注目

momikiyuka

日テレベレーザ 籾木結花選手

1996年4月生まれの20歳にして伝統あるベレーザの10番を背負います。153㎝と小柄ながらスピードあるプレーは近い将来なでしこジャパンで活躍するでしょう。

 

sakagutimizuho

日テレベレーザ 阪口夢穂選手

この人、この試合でパスミスやトラップミスが無かったかもしれません。次の女子ワールドカップでジダンのような選手になる気がします。ちょっと次元が違いますね。

投稿者 松尾