サッカーの試合中は、常に素早く的確な判断が求められます。何気なくプレーしているようでも、そこには一瞬の間に様々に思考の模索が行われ、その決断に基づきプレーをしています。

参考になる面白い記事がありましたので、この記事の一部から抜粋してみましょう。この記事は広島に所属するウタカ選手のインタビューで、彼のプレーや人柄を紹介する記事です。その中で先日のJリーグの試合で得点を挙げたシーンを本人が振り返って解説しています。

「相手(バイア)が自分に強く当たりに来ていることは分かっていたので、彼のポジションをしっかりと見ながら、まずはファーストタッチで相手に取られない位置にボールを置いた。相手が思ったよりも右から来ていたので、ターンしてよりスペースが広いほうへ運ぼうと思ってボールをコントロールした。別の選手が追いかけてきたけど、彼をブロックすることでシュートを打てるスペースを作れたので、あとは冷静に決めるだけだった」

文章になると分かりづらいですが、以下に箇条書きしてみます。

①パスをもらう前に、相手ディフェンダーと自分の距離感を確認する。

②相手が自分に強く体をぶつけてくると予想する。

③その予想に基づき、相手に取られない位置にボールを置く決断し実行する。

④自分の想定よりも相手が右からボールを取りに来たと状況を把握する。

⑤④の状況と①で事前に把握した周囲の状況から、ターンしてより広いスペースにボールを運ぶ決断を下し実行する。

⑥他のディフェンダーが追いかけてきた事を把握する。

⑦そのディフェンダーがどのようにボールを奪いにくるか想定し、どのようにブロックするか判断し実行する。

⑧⑦と同時にキーパーのポジションを確認する。

⑨キーパーが取れないであろう箇所を想定してその中からより得点が出来る確率が高いところを選出し、そこにシュートする決断を下し実行する。

箇条書きにしてみましたが、やっぱりわかりづらいですね。では実際のプレーを見てみましょう。

こちらが動画です。

21秒あたりから始まります。

上記に長々と書いたのが意味無いくらいとても短いプレーです。しかしこの一瞬のプレーの間に様々な思考が成されています。

相手がいないところにトラップする技術、ボールを運ぶ技術、シュートする技術は教える事ができますが、しかしこの一瞬の間の状況把握能力、決断力を鍛えるのはとても難しい事です。

この動画は、西が丘のキーワードである「考えてプレーする」これを象徴したわかりやすいプレーなのかなと思います。「選択肢」「判断」、常々言っている事です。どれほど技術があってもそれを有効に活用できなければ意味がありません。逆にいると、それほど技術が無くても有効的に活用すれば効果的なプレーになる奥深さがサッカーにはあります。「考える」事がいかに重要か、改めて思い直すプレーです。

ちなみに、現在日本サッカー協会は様々なテストを繰り返しながらこの能力の向上に努めています。まだ一部の選抜メンバーでその訓練が実施されていますが、その効果がもっとはっきりとわかるようになったら私たちのような地域クラブにも具体的な指導の指針が降りてくるでしょう。それを待つまでもないですが。

投稿者 松尾