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世界に披露した日本の攻撃サッカーと育成について

ワールドカップが開幕してから寝不足の日々が続いてますが、今日ほど眠かったことはありません。なにせ睡眠時間が2時間くらいですから・・・。

結果は皆さまご存知の通りですが、燃えた試合でしたねぇ。試合前は日本代表がこれほど善戦すると思わなかった人がほとんどではないでしょうか?今回の代表はことごとく私たちの期待を良い意味で裏切ってくれました。予選リーグを通しての戦いには称賛しかありません。これほど攻撃的で立派なサッカーを魅せてくれた彼らには心の底から感謝したいと思います。

おそらくこれから冷静な意見として、試合運びの拙さを指摘する記事やずる賢さが足りないなどの意見がメディアから出てくると思いますが、それは西野監督を理解していない方々の意見です。彼が監督をやっている以上、最後まで攻撃の手を緩めないのはこれまでのレイソルやG大阪の戦い方を見れば明らかです。
そして前園や城、中田を率いてブラジルに奇跡的な勝利をおさめ「マイアミの奇跡」と呼ばれたアトランタオリンピックですが、ブラジルに勝利したにも関わらず、称賛されることなく逆に守備的な戦術を批判されたことが彼のアイデンティティを形成し、その後の超攻撃的なスタイルを形成したのは西野監督の意地なのでしょう。そのような監督に攻撃の手を緩めてバランス良く試合運びをしろと要求するのは無理な話し。
しかしそうなると予選リーグ最終戦のポーランドの終盤の時間稼ぎは何なのか?ということになりますが、おそらくあれは何が何でも決勝トーナメントに行くという西野監督の執念でしょう。前述のオリンピックでは優勝候補のブラジルとハンガリーに勝利し、ナイジェリアに負けて2勝1敗にも関わらず予選リーグ敗退の憂き目にあいました。攻撃的なサッカーを貫く、どんな手段を取ってでも決勝トーナメントに行く。相反することもあるこの2つの要素が西野監督の判断基準となり、あのような決断を下したと思います。コロンビアとセネガルの結果次第では予選敗退になっていた、あまりに運に頼り過ぎる等々、これもこれから批判されるかもしれません。しかしあの段階で日本が決勝トーナメントに行くことは運命だった気がします。それは運ではなく、西野監督のとてつもない執念が手繰り寄せた運命であり、決してロジカルなものではありません。

これでロシアワールドカップにおける日本代表の試合が終わったわけですが、ワールドカップにおいて日本代表が背負う使命がいくつかあります。結果も大事ですが、それよりも世界に対し立派い戦う日本のサッカーを披露することも重要なポイントになります。弱小国が強豪国に勝つことはこれまで何度もありましたが、それは極端な守備でセットプレーやカウンターから少ないチャンスで得点を取るというサッカーです。今回もロシアがそのサッカーでスペインに勝利してますね。その結果は世界に対し衝撃をもって伝えられていますが、中には”サッカーを壊す”と批判され、堂々と戦うべきという論調もあるのです。弱者の戦略として一般的ですが、しかしパスとドリブルを駆使して美しく勝利したいと考えるのは世界中のコーチの理想であり、また観客もそれを望んでいます。
最初は弱者のサッカーでも良いかもしれない、しかしいつまでもそれでは世界は評価してくれません。どこかでリスクを負って攻撃的に戦わなくてはならず、今回の日本代表がそれを表明してくれました。この姿勢を継続し、結果が伴ってくると日本もサッカーの強豪国として世界から認知されます。そうなると移籍市場でも日本人の価値が向上し、これまでより欧州に移籍する選手が増えるでしょうし、欧州から日本にくる選手も増えるでしょう。そのような循環が国内リーグの強化と発展を伴い、またスポンサーの価値が向上し、より多くのお金が入ってくる可能性もあります。世界から認められるということはこれだけ大きなメリットがあるのです。

そして大会前は日本のパスサッカーは通じないという論調もありました。しかしどの試合でもブレないパスサッカーを展開し強豪にも引けを取らない攻撃なサッカーでその技術を披露しました。これは私たち育成チームの指導者が決して見落としていけないことです。日本の技術は世界に通じる、いや大きな武器になるという認識を持つことによりトレーニングや選手評価基準は必ず変わってきます。目先の試合に捉われずボールを大事に扱うプレー、積極的にドリブルで相手に仕掛けるプレーは、失敗してもそれをトライさせ続けるコーチングが必要で長期的な視野のもと指導する必要があります。「日本の武器はドリブルやパスの技術だ!」と言ったところで試合になるとピンチの時に「クリアしろ!(ボールを遠くに蹴りだせ!)」と言っていてはいつまで経っても技術は伸びません。そこでボールを奪われて失点したとしても、そのせいで試合に負けたとしてもクリアせずにパスなどで状況を打開したプレーを認めてあげなくてはいけません。これからはより指導者の度量が試されます。技術を伸ばすのは痛みを伴うこと。指導者が耐える事ができれば子供は伸びていくでしょう。

また技術的な要素だけでなく、その技術を活かすべく積極的に動き続けるダイナミックなサッカーも見落とすことはできません。一瞬で状況が変化するフィールド上において、次の展開を予想し素早くディフェンスに戻ったり、攻撃するスペースを作るべく一人一人が連動して時には長い距離を全速力でスプリントするプレーは、指示されるのを待つだけの選手では絶対にできないプレーであり、常に今は何をするべきか?しなくてはいけないのか?を自主的に考え、瞬時に実行する頭の良さと決断力を必要とします。
「自ら考え、実行する」、最近の育成コーチのトレンドワードです。大正解ですね。しかしそれをどこまで試合やトレーニングで反映できているでしょうか?私たちも試行錯誤で取り組んでいますが、これは中々難しいテーマです。このトレーニングを行えば飛躍的に考える力が向上する、というものは無く、とにかく継続が重要で長い目で評価しなくてはならず、しかもご家庭での過ごし方も影響を与えますので保護者の方々の協力と理解を得る必要があるのではないでしょうか。

まだまだ書き足りないですが、長すぎるのでこのくらいでこの記事は終わらせます。それにしても4年に1度に行われるワールドカップは、日本と世界の比較を検証し、育成のトレーニングを考えるとても良い機会です。今回もたくさんの発見がありました。この発見をトレーニングに落とし込み、いつかこのクラブから日本代表の選手が出てきてくれれば・・・。

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