子供たちの大会がある春から夏過ぎまではあまりJリーグを観る機会がありませんが、少年サッカーの大会がシーズンオフの今はとにかく試合を見まくっています。DAZNで観る時もありますが、できる限り現地で観戦するようにしています。指導者の中には全く見ない方もいますが、海外の試合でもJリーグでも育成のヒントはそこかしこに転がっており、またトレンドを知る上でも私はつぶさに見た方が良いと考えています。
特に今はJ1は佳境であり、J2はプレーオフを掛けた熾烈な戦いが見られます。昨日DAZNで見た川崎対G大阪の試合も興味深いテーマがあり、この試合だけで2000文字のブログは書けそうですが、それよりも今回は本日観てきた東京ヴェルディ対徳島ヴォルティスの試合について記載してみましょう。
この試合はJ2最終節であり、試合前の順位では徳島が5位、東京ヴェルディが6位です。そして勝ち点1差で7位のジェフユナイテッド千葉がおり、6位以上で昇格プレーオフに進出できます。徳島と東京ヴェルディの試合は勝てば昇格プレーオフの進出が確実であり、負けもしくは引き分けでは千葉の結果によって明暗が決まります。
さて試合ですが、序盤から優れたパスワークと素早い攻守の切り替えにより徳島が攻勢に出ます。徳島は見せかけだけの技術ではなく常にゴールを意識したパスやドリブルで、様子見のパスと言われるパススピードが遅く、何の意図も感じない全く無駄なパスが皆無で、全員がとにかくアグレッシブにゴールを狙いに行きます。そしてボールを奪われた瞬間にすぐさま数人で囲い込み、相手に付け入る隙を与えません。本当に良くトレーニングされた優れたチームです。
試合はそんな徳島の攻撃に、高い集中力で最後まで守り切った東京ヴェルディが2-1で勝利しました。これで東京ヴェルディが5位になり、試合に勝った千葉が6位、徳島は7位となり残念ながらプレーオフに進出できません。
ところでこの3チームは監督がいづれも外国人なのです。東京ヴェルディはスペイン人のロティーナ監督、千葉はアルゼンチンのエスナイデル監督、そして徳島もスペインのロドリゲス監督。この3名は今シーズンから指揮を執っています。ここである事に気付いたのですが、Jリーグのチーム編成はだいたい1月中旬までには決まります。そして新たに監督になる人も同時期に決まるので新監督になる人は初めての年の選手編成に関与していないのです(GMまたは強化部が行います)。たいがい監督は自らの戦術に合う選手をチームに移籍獲得の要望を出しますが、この3名の監督は今いる選手を鍛えてこの順位で終えました。
では元々所属していた選手が優秀だったかと言えば何ともコメントが難しいところがあります。5位で終えた東京ヴェルディの前期はJ3降格ギリギリの18位でしたし、ジェフユナイテッド千葉は中位の11位、徳島も中位の9位です。もちろん前期と今期では全て同じ選手とは言いません。特にジェフユナイテッド千葉は大幅な入れ替えを行っています。それでもくどいようですが監督が直接選手の構成に関わっていませんし、新たな選手も有名な選手は失礼ながら皆無です。それでも監督によって、トレーニングによってプレーオフに進出できるほどにチームは成長できることに驚きを禁じえません。
東京ヴェルディの最終戦のセレモニーで羽生社長が言ってました。「日本のサッカーはもう外国人に教わる必要は無い、日本人の監督、選手だけで世界に羽ばたいていけると思っていた。しかしこの状況から考えると私たちはまだまだ世界から学ぶ必要がある。」と。
彼らの試合を観ると、「こんな凄い選手がJ2にいるのか!」と思うほどです。これまで無名でしかもこれまではそれほど活躍していなくても監督が変われば見違えるほどのプレーをします。これは優秀な監督は重要ということはもちろん、どのような選手でも潜在能力が引き出されていなかったという見方もあります。実力だけの世界で生きるプロフェッショナルな選手でも、潜在的な力は開花されてなく、まだまだ伸びる余地がある。
こんなことを考えていた帰りの電車では、「果たして私たちは子供たちの力を現時点の限界まで伸ばしているのか?」と考えてしまうのは自明の理。選手との距離感、信頼関係、言葉遣いとその内容、トレーニングの種類、内容、計画、それらのマネジメントは私たちもまだまだ学ぶ必要があります。Jリーグなどの試合を観るのも良いですが、いつか機会を作って普段のトレーニングも観てみる必要がありそうです。