世界的なスポーツであるサッカーは、その時代で流行りとなる戦術があります。サッカー発祥の地と言われるイングランドでは、古くから「キックアンドラッシュ」という戦術が用いられ、とにかく相手ゴール前にボールを蹴りこんでみんなで一斉に攻め込むという肉弾戦が主流でした。そこでは技術的に優れた選手よりも身体が大きく、ぶつかり合いに負けない筋力が備えた選手が評価され、育成においては当然、遠くまでボールを蹴る技術、ぶつかっても負けないトレーニングが主流だったと聞いています。

それが1990年代にはイタリアやフランスなどから優秀な監督がチームを率いるようになり、蹴って走るだけの単純なサッカーからボールコントロールの技術や巧みな戦術を用いたチームが結果を出すようになったことにより、古い戦術は淘汰され今では世界の最先端のサッカーをするリーグと言われています。

日本においても同様で、Jリーグが発足するもっと前にはキックアンドラッシュのような大味なサッカーであり、技術など二の次でしたが、セルジオ越後氏のようなブラジルからの日系選手の流入と活躍により、ゆっくりですが日本人の体格の合ったサッカーの模索が始まり、技術や俊敏性で勝負する今に至る状況になっています。

前置きが長くなりましたが、現在世界をリードする欧州のフットボールネーションでは、「ポゼッションサッカー」という戦術が主流です。これは2010年のワールドカップでスペインが優勝したことにより、その傾向に強く流れ、メガクラブを率いるグラディオラ監督やバルセロナFCの活躍により今や世界的なトレンドと言えるでしょう。

日本でも昨年Jリーグの覇者である横浜Fマリノスや強豪川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島など多くのチームがこの戦術を用いています。ロシアワールドカップの日本代表でも用いられたこの戦術は、パス交換をしながら相手ディフェンスを崩していく戦術で、香川、柴崎、乾選手がショートパスを交えながら攻め込むシーンは皆さんも記憶に残っていると思います。

おそらく今後もこのサッカーが主流となり、より戦術的な進歩を重ねていくはずです。

さて、ここまで書けば小学生年代などにおける重要なトレーニングはもうお分かりになると思いますが、お察しの通りボールを止める、蹴る技術の向上です。正しい位置にボールを止めて、素早く正確に蹴る、これが絶対に必要な技術であり、練習や試合においても勝ち負けよりも何よりも優先させる必要があります。

正しくボールを止めて、正確に蹴る技術ですが、参考になる動画があります。川崎フロンターレ中村憲剛選手の動画です。

 

最初の対面パスでは、少しバックスピンを掛けてボールが離れないようにして、次のパターンでは逆足で素早くパスを出せる位置に正確にボールを置くようにトラップしています。

これがプロの技術ですね。

上手い選手は試合において、いつも特別なことをやっているわけではありません。基本技術を素早く正確に行えることにより、余裕をもってプレーでき、周りを見る時間が生まれ、判断に優れたプレーを実践できるというわけです。

ただ基本技術を向上させるトレーニングは単調であまり楽しくないものであって、それを効率的にそして子供たちに楽しませながら実践させるのが優れたコーチなのでしょう。子供が相手ならば強制的にやらせることは可能です。しかしそれはスポーツの本質が外れたこと。楽しく、真剣に実践させることをコーチは考えなくてはいけません。

長々と書きましたが、土曜日の六年生の試合と夜に川崎フロンターレの試合を見たら、やっぱり小学生年代は基礎技術が一番重要だよなぁとしみじみ感じた次第です。

投稿者 松尾